「私はアメリカ空軍のパイロット、クヒオ大佐だ。」
そう名乗る男の正体は――なんと“結婚詐欺師”。
2009年公開の映画『クヒオ大佐』は、実際に日本で起きた事件をモデルにした
ブラック・コメディであり、主演・堺雅人がクセの強い“ダメ男”を怪演した
異色の快作です。
華麗なウソと、妙に人懐っこい笑顔、そしてなぜか憎めないキャラクター。
今回は、そんな“詐欺師なのにどこか魅力的”なクヒオ大佐の世界を
たっぷりとご紹介します。
Contents
主なスタッフとキャスト
監督:吉田大八
社会の裏側や人間の滑稽さを描くことに定評のある吉田監督。
本作ではコミカルでありながら、人間の本質に切り込む鋭い視点を発揮。
キャスト陣
堺雅人(クヒオ大佐)
完璧な詐欺師ではない“ちょっと抜けてる”男を、独特の間と表情で魅せる。
松雪泰子(永野しのぶ)
弁当屋を経営するしっかり者の女性。クヒオに本気で惚れ込んでしまう。
満島ひかり(浅岡春)
学芸員のインテリ系女性。クヒオの魅力に興味を抱きつつも、
どこか距離を保とうとする存在。
中村優子(須藤未知子)
銀座のナンバー1ホステス。唯一、クヒオの本質を見抜こうとする冷静さを持つ。
新井浩文、児嶋一哉、安藤サクラなど
脇を固める俳優陣も個性派揃いで見応え十分。
ストーリー概要
舞台は日本。
「ジョナサン・エリザベス・クヒオ」と名乗る男が、堂々とアメリカ空軍の
エリートパイロットとして、武勇伝を披露する。
流暢な日本語、いかにもらしい経歴、軍服、勲章、写真――すべてが完璧に
“詐欺用に仕上がっている”。
彼の目的は、女性に結婚をほのめかしてはお金をだまし取ること。
ターゲットにしたのは、弁当屋の経営者・しのぶ、知性派の博物館学芸員・春、
そして銀座のトップホステス・未知子。
しかし、未知子だけはこれまでの“騙される女たち”とは違った。
次第に、クヒオ大佐の“仮面”が剥がれ、本当の孤独や痛みがにじみ出していく――。
映画の見どころ
① 堺雅人の“怪演”が光る!
本作の最大の魅力はなんといっても、堺雅人の演技です。
『半沢直樹』や『鍵泥棒のメソッド』などで知られる堺ですが、ここでの役柄は
明らかに“おかしい”男。
それなのに、どこか愛らしく、哀れで、クセになる存在感を放っています。
軍服姿で敬礼しながら語る“戦場の嘘エピソード”は絶妙にシュールで、
笑っていいのか心配になるほど。
でも、見ているうちに「なぜか応援したくなる」から不思議です。
② 女性キャラたちのリアルな描写
松雪泰子、満島ひかり、中村優子――タイプの異なる3人の女性は、
いずれもクヒオに“本気で惹かれて”しまいます。
それぞれのキャラクターには、恋愛への憧れや不安、社会的プレッシャーなど、
現代女性のリアルな悩みや孤独が描かれていて、
「なぜこんな男に騙されるのか」が自然と理解できる作りになっています。
このバランス感覚が秀逸で、単なる詐欺映画や恋愛コメディに終わらない深みを
もたらしています。
③ 笑っていいの?泣いていいの?“共感型ブラック・コメディ”
本作のトーンは明るくも、常にどこか切ない。
クヒオ大佐の嘘は見え透いているけれど、彼の中には「本当に愛されたい」
「必要とされたい」という切実な感情が隠れている。
そんな彼に騙される女性たちも、実はどこかで“わかっていた”のかもしれない――
この微妙な感情のグラデーションが、本作を単なるドタバタ劇にせず、
静かな余韻を与えています。
映画の個人的な感想
『クヒオ大佐』は、「詐欺師が主役」という設定からは想像できないほど、
繊細で人間味あふれる映画でした。
堺雅人の演技は、単なる「面白い人」にとどまらず、“どうしようもないのに愛おしい”
という感情を引き出してくれる。
そして松雪泰子や満島ひかり、中村優子といった女優陣が、その感情にリアルさを
与えているのも見事でした。
ブラック・ユーモアにくすっと笑いながら、
「人間ってこんなに不器用で、でも誰かに愛されたいんだよな」
と、ふと思わせてくれる――そんな映画です。
社会的メッセージもあり、娯楽性もあり、ラストにはちょっと切なさも残る。
ジャンルにとらわれず、心に引っかかる作品を探している方にはぴったりです。
まとめ
『クヒオ大佐(2009年)』は、
結婚詐欺師の“バカっぽさ”と“哀しさ”を見事に描いた、共感型ブラック・コメディです。
・堺雅人の怪演に笑いたい
・一風変わった邦画が観たい
・恋愛と人間関係の“ややこしさ”を味わいたい
そんな方に、強くおすすめします。
予告編を観れば、きっとこの“ウソつきなのに憎めない男”に、
あなたもちょっとだけ心を動かされるかもしれません――。
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