「昔の『陰陽師』は、今観ても面白いの?」
「野村萬斎の安倍晴明は、なぜ今も高く評価されているの?」
そんな人に紹介したいのが、2001年公開の映画『陰陽師』です。
本作は、平安時代に実在したとされる陰陽師・安倍晴明を主人公に、怨霊や呪いが渦巻く都を描いた時代劇ファンタジー。
難しい歴史映画ではありません。
安倍晴明と源博雅の友情、都を揺るがす陰謀、怨霊の悲しみ、そして晴明と道尊の呪術対決が、分かりやすい娯楽映画としてまとめられています。
この記事では、ネタバレなしのあらすじ、見どころ、製作の裏話、作品のテーマ、筆者レビューを紹介します。
結論から言うと、『陰陽師』は野村萬斎さんの安倍晴明を見るだけでも価値がある、日本の怪異ファンタジーを代表する一本です。
まずは予告編で、平安京の妖しく美しい空気を確認してみてください。
映画予告編
映画の基本情報
・公開年:2001年10月6日公開
・上映時間:116分
・監督:滝田洋二郎
・原作:夢枕獏「陰陽師」シリーズ
・脚本:福田靖、夢枕獏、江良至
・音楽:梅林茂
・配給:東宝
・主なキャスト
・野村萬斎(安倍晴明)
・伊藤英明(源博雅)
・今井絵理子(蜜虫)
・夏川結衣(祐姫)
・宝生舞(瓜の女)
・国分佐智子(任子)
・萩原聖人(早良親王)
・柄本明(藤原元方)
・岸部一徳(帝)
・小泉今日子(青音)
・真田広之(道尊)
本作は、夢枕獏さんの人気小説シリーズをもとに、映画独自の物語として構成されています。
中心となるのは、冷静でつかみどころのない安倍晴明と、まっすぐで人間味のある源博雅。
この対照的な二人の組み合わせが、作品全体を支えています。
あらすじ
平安京では、原因不明の病や怪異が相次いでいた。
右近衛府中将・源博雅は、怨霊に苦しむ人物を救うため、都で名を知られる陰陽師・安倍晴明を訪ねる。
晴明の不思議な術と考え方に戸惑いながらも、博雅は次第に彼を信頼していく。
その頃、宮中では陰陽頭・道尊が、帝の子をめぐって密かに恐ろしい計画を進めていた。
都に残る深い恨みと悲しみが利用され、平安京は大きな災いに包まれていく。
晴明と博雅は、人と怨霊の思いが絡み合う陰謀に立ち向かう。
見どころ・魅力
見どころ①:野村萬斎の安倍晴明が圧倒的
本作最大の魅力は、やはり野村萬斎さんです。
安倍晴明という人物は、天才的な力を持ちながら、感情を表に出しすぎません。
笑っているようで、相手を試している。
優しいようで、どこか人間離れしている。
野村萬斎さんは、その不思議な距離感を、視線や指先、身体の動きだけで表現しています。
呪文を唱える姿にも、狂言師ならではの声と所作の美しさがあります。
今では安倍晴明を題材にした映像作品が数多く作られていますが、この映画の晴明は、今なお強烈な基準の一つです。
見どころ②:晴明と博雅の友情
伊藤英明さんが演じる源博雅は、晴明とは対照的な人物です。
博雅は正直で、情に厚く、怪異を前にすると素直に驚きます。
晴明が頭で世界を見る人物なら、博雅は心で世界を見る人物です。
晴明は博雅をからかいながらも、そのまっすぐさに少しずつ心を開いていきます。
この二人の関係があることで、呪術や怨霊が登場する物語にも温かさが生まれています。
ただ怪物を倒すのではなく、二人で酒を飲み、話をし、相手を理解していく時間が良いのです。
見どころ③:真田広之が演じる道尊の迫力
敵となる道尊を演じるのは、真田広之さんです。
道尊は単純な悪人ではありません。
高い能力と野心を持ち、自分こそが都を動かす存在になろうとします。
晴明が自然の理を読み、人の心を見ようとする陰陽師なら、道尊は力で運命を変えようとする陰陽師です。
野村萬斎さんの静かな演技に対し、真田広之さんは強い熱と迫力で対抗します。
二人が向き合ったときの緊張感は、本作の大きな見どころです。
見どころ④:怨霊を単なる悪として描かない
この映画に登場する怨霊は、ただ人間を襲う怪物ではありません。
そこには、忘れられなかった思い、裏切られた悲しみ、長い年月を経ても消えない恨みがあります。
晴明は、怪異を力だけで消そうとはしません。
なぜ鬼になったのか。
何がその魂を縛っているのか。
その理由を見ようとします。
この考え方があるため、本作は単なる妖怪退治の映画ではなく、悲しい人間ドラマとしても楽しめます。
見どころ⑤:平安京の妖しく美しい世界
衣装、建物、夜の闇、炎、池、水面に映る月。
本作は、平安時代を歴史教科書のように再現するのではなく、怪異が本当に存在していそうな幻想世界として見せています。
特に夜の場面には独特の雰囲気があります。
現代のCG作品と比べると、映像技術に時代を感じる部分はあります。
しかし、俳優の所作や美術、照明が作る空気は、今観ても魅力的です。
派手さだけではない、日本的な暗さと美しさがあります。
見どころ⑥:呪術対決だけでは終わらない
予告編を見ると、晴明と道尊の呪術対決が中心の映画に見えるかもしれません。
もちろん、その対決も大きな見どころです。
ただ、本作の本当の面白さは、力の強さだけで勝敗が決まらないところにあります。
人の心を理解できるか。
憎しみに飲み込まれずにいられるか。
誰かの悲しみに寄り添えるか。
最後に問われるのは、呪術の技量だけではありません。
映画のトリビア・製作の裏話
夢枕獏の原作をもとにした映画独自の物語
本作は、夢枕獏さんの「陰陽師」シリーズに登場する人物や複数の要素を使いながら、映画用の物語として組み立てられています。
そのため、原作の一編をそのまま映像化した作品ではありません。
原作ファンは違いを楽しめますし、原作を知らない人でも一本の映画として理解できる構成です。
野村萬斎にとって映画初主演作
野村萬斎さんは本作で映画初主演を務めました。
狂言で培った発声、立ち姿、扇の扱い、静かな身のこなしが、安倍晴明という人物に独特の説得力を与えています。
映画俳優が陰陽師を演じるのではなく、古典芸能の身体を持つ人が平安の異能者を演じた。
それが本作の大きな成功の理由だと思います。
2003年には続編『陰陽師II』が公開
本作のヒットを受け、2003年には野村萬斎さんと伊藤英明さんが再び出演する『陰陽師II』が公開されました。
晴明と博雅のコンビをさらに観たい人は、続編もあわせて楽しめます。
テーマ・メッセージの解説
テーマは「名前によって世界は縛られる」
本作では、晴明が語る「呪」という考え方が重要です。
名前を付けることで、人は物事を理解します。
しかし同時に、名前によって見方を決めつけてしまうこともあります。
鬼と呼ばれた存在は、本当に最初から鬼だったのか。
悪と呼ばれた者は、最初から悪だったのか。
晴明は、目の前の姿だけで判断せず、その奥にある真実を見ようとします。
もう一つのテーマは「恨みを利用する者」
怨霊を生むのは、悲しみや憎しみです。
しかし本当に恐ろしいのは、その感情を自分の目的のために利用する人間かもしれません。
道尊は、人の弱さや都に残る怨念を力に変えようとします。
晴明は、それを解きほぐそうとする。
同じ陰陽師でも、力の使い方がまったく違うのです。
評価
・総合:★★★★☆(4.3/5くらいの満足感)
・世界観:★★★★★
・分かりやすさ:★★★★☆
・怪異ファンタジー:★★★★☆
・キャストの魅力:★★★★★
・もう一回観たい度:★★★★☆
※一口コメント:
野村萬斎の安倍晴明が、とにかく見事。
呪術対決だけでなく、晴明と博雅の友情や怨霊の悲しみまで描いた、今なお色あせない平安ファンタジーです。
筆者レビュー
良かった点3つ
1)野村萬斎が完全に安倍晴明になっている
歩き方、目線、声、笑い方。
そのすべてが晴明らしく見えます。
今観ても、この配役を超えるのは簡単ではないと感じます。
2)晴明と博雅の関係が心地よい
博雅の素直さが、晴明の人間らしい部分を引き出します。
事件だけでなく、二人の会話をもっと見ていたくなる映画です。
3)悪役にも悲しみと人間味がある
道尊は危険な人物ですが、ただの悪役として処理されていません。
真田広之さんの熱演もあり、晴明とは別の道を選んだ陰陽師として強い印象を残します。
気になった点2つ
1)CGには2001年らしい古さがある
現在の映像と比べると、呪術や怪異の表現に時代を感じる場面があります。
ただし、美術や演技の力が強いため、作品全体の魅力を大きく損なうほどではありません。
2)登場人物が多く、最初は関係をつかみにくい
帝や貴族、陰陽師、怨霊など、多くの人物が登場します。
平安時代の官職名に慣れていない人は、序盤で少し戸惑うかもしれません。
細かい家系を完璧に覚えなくても、晴明、博雅、道尊を中心に追えば十分楽しめます。
どんな人にオススメ?
・安倍晴明や陰陽師に興味がある人
・野村萬斎の代表作を観たい人
・平安時代を舞台にした映画が好きな人
・妖怪、怨霊、呪術ものが好きな人
・真田広之の迫力ある悪役を観たい人
・友情と人間ドラマのあるファンタジーが好きな人
まとめ
『陰陽師(2001年)』は、安倍晴明と源博雅が、都を揺るがす呪いと陰謀に立ち向かう時代劇ファンタジーです。
野村萬斎さんの妖しく優雅な安倍晴明。
伊藤英明さんのまっすぐな源博雅。
真田広之さんの熱を帯びた道尊。
三人の個性がぶつかることで、平安京の怪異世界に強い説得力が生まれています。
CGなどに時代を感じる部分はあります。
それでも、俳優の所作、美術、音楽、晴明と博雅の関係は、今観ても十分に魅力的です。
予告編を見て、
「野村萬斎の安倍晴明が気になる」
と思ったなら、その期待は裏切られません。
日本の怪異ファンタジー映画を語るなら、今も外すことのできない一本です。
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