1990年公開の『ロッキー5/最後のドラマ』(原題:Rocky V)は、
アメリカ映画史に名を刻む『ロッキー』シリーズの第5作。
第1作を手がけたジョン・G・アヴィルドセン監督が再びメガホンを取り、
原点回帰とも言えるストリート感あふれるドラマが展開されます。
本作は、これまでのようなチャンピオンベルトをかけた試合ではなく、
“人生のリング”そのものに立ち向かうロッキーの姿を描いた作品です。
シリーズを支えてきた友情や家族愛、そしてボクサーとしての矜持が交錯する本作は、
賛否両論を呼びつつも熱心なファンからは
「ロッキーの人間ドラマをじっくり堪能できる一作」として再評価されています。
Contents
主なスタッフとキャスト
監督:ジョン・G・アヴィルドセン
脚本:シルヴェスター・スタローン
出演者:
シルヴェスター・スタローン … ロッキー・バルボア
タリア・シャイア … エイドリアン(ロッキーの妻)
セイジ・スタローン … ロッキー・ジュニア(ロッキーの息子)
トミー・モリソン … トミー・“マシン”・ガン(ロッキーの弟子)
バート・ヤング … ポーリー(ロッキーの義兄)
バージェス・メレディス … ミッキー(ロッキーのかつてのトレーナー/回想シーン)
リチャード・ガント … ジョージ・ワシントン・デューク(悪徳プロモーター)
映画のあらすじ
ソ連での死闘を終えたロッキーは、身体に深刻なダメージを負い、
医師からボクシング続行不可能と告げられる。
心身ともに限界を迎えた彼は引退を決意。
だが、税金問題やポーリーの失態で巨額の財産を失い、
家族とともにフィラデルフィアの下町に戻ることを余儀なくされる。
かつての栄光を失ったロッキーは、妻エイドリアンや息子ロッキー・ジュニアと
向き合いながら、新たな人生を模索する。
そんな中、彼の前に現れたのがトミー・ガンという若きボクサーだった。
トミーの才能を見抜いたロッキーは、かつてのミッキーとの日々を思い出しながら
彼を指導していく。
やがてトミーは次々と勝利を重ね、ボクシング界で注目を浴びる存在となる。
しかし、名声を欲する彼は悪徳プロモーターのデュークに取り込まれ、
ロッキーの元を去ってしまう。
さらにマスコミは「ロッキーの影にすぎない」とトミーを揶揄し、
苛立つ彼は師であるロッキーに挑戦状を叩きつける。
そしてフィラデルフィアの街角で始まる、リング外での壮絶な一戦。
己のプライドと愛弟子への思いを胸に、ロッキーは最後の戦いに身を投じるのだった。
映画の見どころ
原点回帰したフィラデルフィアの街並み
再び下町に戻ったロッキーは、かつての初心を思い出すかのようにジムで汗を流し、
息子や地域の人々と交流します。
華やかなリングから離れた生活描写が、シリーズの原点を彷彿とさせます。
師弟関係の崩壊と葛藤
ロッキーとトミー・ガンの関係は、本作の核心です。
師として弟子を導きながらも、名声に溺れたトミーが裏切ることで、
ロッキーは“父と息子のような絆”を失います。
裏切られた悲しみと、なおも弟子を思うロッキーの姿は胸を打ちます。
ミッキーの幻影との再会
亡き恩師ミッキーとの回想シーンは、シリーズファン必見の感動的な場面。
ミッキーの「お前は世界一だ!」という言葉は、ロッキーにとって再び立ち上がる力となり、
観客にも深い余韻を残します。
リングではなくストリートでの決闘
クライマックスは、これまでのシリーズと一線を画す“リング外”での対決。
フィラデルフィアの街角で繰り広げられる肉弾戦は、スポーツ映画という枠を超え、
ロッキーの人間ドラマとして鮮烈な印象を与えます。
映画の個人的な感想
『ロッキー5/最後のドラマ』は、従来のボクシング映画の枠組みを超え、
人間ドラマに重点を置いた作品だと感じます。
特に、師弟関係の崩壊や親子の絆の再構築といったテーマは、
単なるスポーツ映画以上の深みを与えていました。
個人的には、ミッキーの幻影との再会シーンが最も印象に残っています。
シリーズを通してロッキーを支えてきた存在が、彼の心の中に生き続けていることを
強く実感させられ、胸が熱くなりました。
一方で、リングでの試合ではなくストリートファイトで幕を閉じる展開は、
賛否両論を呼びました。
ですが、私はむしろ「ボクサーとしてのロッキー」ではなく
「一人の人間としてのロッキー」を描いた点で意義があると思います。
名声やお金を失っても、彼には闘志と誇り、そして家族が残っている。
そのメッセージは非常に力強いものでした。
まとめ
『ロッキー5/最後のドラマ』は、王者の物語から一転し、挫折と再生を描いた異色作です。
リングの上ではなく、人生そのものを舞台にしたロッキーの戦いは、
スポーツ映画を超えた普遍的なドラマ性を持っています。
派手さや爽快感を求めると物足りなさを感じるかもしれませんが、
シリーズを通してロッキーという人物に愛着を持ってきた人にとっては、
彼の人間性に深く触れられる感動的な一作です。
ロッキーの物語はここで一度幕を閉じますが、
その後の『ロッキー・ザ・ファイナル(2006年)』や『クリード』シリーズへと続き、
彼の生き様は世代を超えて語り継がれていきます。
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